船橋市の史跡巡り（飯山満城）

前回は千葉県船橋市にある史跡として、「花輪城・峰台・船橋大神宮・船橋城」を紹介したが、ここでは飯山満城跡と噂される地を探索する。（2014年1月実施）

なお、船橋市の城郭では「花輪城、船橋城、船橋御殿、飯山満城、夏見城、米ケ崎城、八木ケ谷城、小野田城、金堀城、楠ケ山城、小穴城、坪井城、洒山城、高根城、金杉城、小栗原城」があるという。

飯山満城（光明寺～王子神社近辺）

半ば伝説的な話であるが、船橋市飯山満町3丁目の光明寺～王子神社近辺が、飯山満城だったという。なお、難読漢字であるが、飯山満と書いて「はさま」と読む。古くからいる住人では「はざま」と呼ぶらしく、高低差の激しい地形とあって、狭間「はざま」を当て字にしたと考えられている。「米（飯）が山のようにできて満ちた土地」という伝承がある。

船橋市のHPによると、江戸時代は上飯山満と下飯山満に分かれていた。子どもたちには「帽子が田んぼに落ちても絶対に取りに入ってはならぬ」と言われるほど深田だったらしい。丘陵地が浸食されて形成された谷状の地形だったが、戦後の住宅開発が進み、かつての面影はないようだ。ただし、傾斜林はいまだに多く残る。
東葉高速鉄道が開通するまでは「陸の孤島」と呼ばれていた。

光明寺（こうみょうじ）

飯山満城の縄張り探索として、まずは光明寺に行く。「真言宗宗豊山派補陀洛山光明寺」である。1500年代に尊慶（そんけい）が開山し、和尚の位牌が現存する。言い伝えでは本尊の阿弥陀如来が地中より自ら光を放ち、掘り起こされたことから始まったそうだ。

船橋市光明寺
この辺じゃ珍しく、かなり立派な山門だ。写真を撮っていたら、散歩していた爺さんに、「写真撮っている人が多いけど、そんなに有名なのかね？」と聞かれた。思わず、「うーん、有名ではないと思うけど。飯山満城めぐりの一貫で」と答えたら、「城？」と不思議そうであった・・。

光明寺山門
山門。金剛力士が結構愛嬌のある顔だ。

光明寺本堂
光明寺の本堂、ならびに鐘楼、墓地。飯山満城らしき痕跡は感じられないが、開基の年代を考えれば飯山満城があったころには光明寺もあったのだろう。

飯山満の王子神社に向かう
次は王子神社に向かうが、とにかく車道が短い区間で頻繁に蛇行しており、見通しも悪く、かなりの悪路。光明寺に「昭和42年3月完成・道路改修記念」の碑が経っており、当時、城郭に沿ってアスファルトを敷いたのだろうかと推測した。元々が道無き道であれば、新規でここまで蛇行することにはならないと思われる。

王子神社

飯山満-諏訪大社の分社王子神社
王子神社の祭神は建御名方で、諏訪大社の分社。上飯山満村（旧地名）で最も古い神社で、現在の神社は文政5年に再建されたもの。当時は織戸加賀守藤原光晴が神主であり、現在も一族（赤門神主と呼ばれている）が奉仕している。明治初期に大火災で書類もろとも焼失したが、氏子によって再建された。
由緒の案内板を見ても、飯山満城については触れられていない。

飯山満城土塁
境内には低いが盛り土が見られ、土塁や平場を彷彿とさせる。富士信仰の「富士塚」があるが、もともとは物見台といったところだろう。

飯山満城址
かなりの住宅地開発でこれといった城郭は確認できないが、王子神社が高台であることは分かった。境内で体操をしている爺さんがいたので飯山満城について聞いてみたが、知らないと言っていた。
話を聞くと、83歳というこの爺様は王子神社の氏子らしく、30年近く飯山満に住んでいるとのこと。神主である織戸家とも面識があるらしいが、「飯山満城なんて聞いたことがねえ」という返答だった。

戦後の住宅開発までは深田、現在においては高低差のある狭間、蛇行の続く車道という地形から、城の立地条件としてとしては信ぴょう性が高い。しかし、相当破壊されたのか、確証は得られない探索であった。城郭というのは、地元住民が後世に残すために史跡保護運動を起こし少なかれ保存される傾向にあるものだが、飯山満の方々はそういう意識がなかったのだろう。

下総国葛飾郡・小金城（千葉県松戸市）を拠点としていた高城氏の支配下にあった、という人もいるようだ。
※高城氏は千葉氏一族とされるが藤原姓二階堂氏いう伝承もある。1590年の小田原攻めにおいては、高城胤則は北条氏に従い、小田原城に籠城している。

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