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大胡氏を祖とする牛込氏の居城

牛込城（うしごめじょう）

新宿区袋町15番地の光照寺一帯には、牛込氏の居城、牛込城があった。牛込氏の住まいでもあったと考えられる。なお、光照寺は1645年に神田から当地に移転したので牛込城との関係性はない。地形は西南から東北東に突き出た舌状台地だが、建造物が密集しており現地でその遠景は確認できない。牛込城の築城時期は不明だが、牛込氏が南関東へ進出した戦国時代の天文年間（1532～1555）あたりだろう。

牛込氏は大胡氏（おおごし）を祖としており、藤原秀郷の子孫である藤姓足利氏（足利成行）の庶流である。大胡氏の領地は上野国勢多郡大胡にあり、赤城山南麓で勢力を振るっていた。一族の「大胡重行」が扇ヶ谷上杉氏（上杉朝興）から離反し、北条氏康の招きを受けて小田原北条氏の家臣となった。武蔵国豊島郡に移り、武蔵国牛込をはじめ日比谷・堀切に所領が与えられた。1559年の「小田原衆所領役帳」には牛込に居たことが記されている。大胡重行の子である「大胡勝行」は地名をとって牛込氏を名乗り、牛込城を築いて居館とした。

1590年に豊臣秀吉によって小田原北条氏が滅び、徳川家康が江戸に入封すると牛込城は破却された。勝行の子である「牛込勝重」が徳川家康の家臣となり、旗本として徳川家に仕えた。

光照寺。削平されたようで遺構らしきものはない。

すでに参道の段階で寺なのか民家なのかわかりにくい佇まい。樹王山 正覚院 光照寺は1603年に増上寺の末寺として神田元誓願寺寺町で創建された。開基は大草松平家3代当主の松平昌安（実名は信貞）。1645年に牛込城跡に移転した。出羽松山藩江戸屋敷（酒井家）の菩提寺となったため、酒井家歴代の墓が残る。

牛込城に史跡らしい雰囲気がまったくないが、強いて言うなら高台にあるということのみ。そのため古くからある坂道「ゆれい坂」を登ることで登城とした。江戸時代、この坂あたりには梅の木があり、二代将軍徳川秀忠が中国の名所から名をとった坂道というが諸説ある。行人坂、唯念坂、幽霊坂、若宮坂など他の呼ばれ方もする。もちろん、牛込城と関係があった坂なのかは不明である。

牛込という地名は古く、牛牧の跡地だった可能性がある。701年（大宝元年）、各地に官牧が置かれたが、「神崎牛牧」というのが現在の牛込辺りとされる。

牛込城の北には地蔵坂があるが、光照寺に子安地蔵があったことに由来している。地蔵坂は別名では藁店（わらだな）、または藁坂（わらざか）と呼ぶ。ちなみに、「江戸名所図絵」や『御府内備考』では、藁店の上に牛込城があったと記している。坂と牛込城との関係は不明。牛込城から600mほど北側には御殿山城ならびに築土城がある。

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