小田原合戦後、皆川城から移転した皆川氏の居城。「蔵の街」となった城下町

栃木城

栃木県栃木市城内町にあった栃木城を登城（2019年4月）。現在では整備された栃木城址公園となっている。「皆川正中録」によると、古城としては1394年に長沼秀光が城館を築いたのが始まりとされる。ただ、長沼秀光という人物は明らかになっていない。1590年の小田原合戦で豊臣秀吉方の軍勢（上杉景勝）により皆川城が落城すると、翌年、皆川広照がこの場所に栃木城を築城した。落城以前から皆川の寺社（神明宮、満福寺、近龍寺など）を栃木城付近に移転させていたので、居城を栃木城に移転する計画はもともとあったようだ。小田原合戦時、皆川広照は北条氏照に属し小田原城に籠城していたが、小田原城包囲の前に脱出し徳川家康に投降している。そのため所領は安堵されており、栃木城の築城にいたっている。

皆川広照は徳川忠輝（家康の6男）を養育する御附家老になったため長野県飯山に転封となり、弟の皆川俊勝が栃木城の城代となった。徳川忠輝は粗暴な人物であり、広照は諫言を度々行うが、それがトラブルとなり1609年に皆川氏は改易される。栃木城も廃城となり、19年と短い間の城であった。調査結果によれば、栃木城での戦闘は一度もないとされている。その後、栃木町は足利藩領になり、1704年、栃木城内に陣屋が置かれた。なお、陣屋は後に現在の裁判所の位置に移転。

栃木城を登城現在残る栃木城遺構は東二の丸の北部で、土塁と堀が僅かに確認できる。（栃木城址公園）

栃木城の縄張りは外周918m、本丸は東西149m・南北131mの規模。東に二の丸・三の丸、南側に南丸、北側に屋敷があったとされる。周囲には18mの堀を配し、東西ではそれぞれ河川と湿地を要害とし、外郭に東北の東宮神社、南に円通寺を配した。平成20年に栃木城主郭の発掘調査が行われ、北条氏の築城で知られる障子堀が確認された。また葵御紋の信楽焼椀の一部が発見されており、徳川幕府との関係が深かったことがわかる。

栃木城の縄張り栃木城址公園の説明板にあった縄張り図。ほとんど壊滅状態だが、城址公園は東二の丸の北部にあたる。

栃木城の土塁（東二の丸の北部）

栃木城址公園と説明板。

栃木城土塁土塁は高さ6土塁は高さ6.7m、幅13m、長さ30mほど。この写真は南側からの風景。

北側から見た土塁。

土塁頂上からの眺め。

堀跡

栃木城西側の堀跡東二の丸の西側の堀跡。

残されている堀跡は現在クランク状

外堀の巴波川

栃木城の外堀、西の要害となった巴波川（うずまがわ）。皆川広照は居城を皆川城から栃木城に移すと城下町を整備した。（父親の代から整備は始まっていたという）。近江商人を誘致し野州麻を中心に商業を発展させたのが、今日の「蔵の街」である。氾濫する巴波川沿いに街を形成し河川船運による農作物の積み出し地と栄えた。明治時代には栃木県の県庁所在地であったが、後に宇都宮市に移転している。