会津藩祖の保科正之を祀る神社

土津神社（はにつじんじゃ）

福島県耶麻郡猪苗代町にある土津神社を参拝した（2019年4月）。会津藩の初代藩主である保科正之を祀った神社であり、奥の院では保科正之墓所となっている。神殿や回廊などは荘厳壮麗であり、「東北の日光」または「奥日光」といわれるほどだったが、1868年の戊辰戦争により焼失した。現在の社殿は町の人達によって明治13年に造営されたものである。1915年には野口英世も参拝している。

土津神社保科正之は二代将軍徳川秀忠の第四子として1611年に生誕。家光の弟にあたる。母は秀忠の乳母の侍女。秀忠の正室・お江は側室を認めなかったため、密かに生まれ、武田信玄の娘・信松院や見性院に匿われた。そして7歳で高遠藩主の保科正光の養子として育つ。21歳で高遠3万石、26歳で山形最上20万石、33歳の1643年には会津23万石へ入封し会津松平家の始祖となった。会津藩の規範である「家訓十五ヶ条」の制定をしたことが有名である。4代将軍・家綱の後見役として20年間幕政の実権を握った。徳川幕府が武断政治から文治政治に転換させた立役者である。会津藩主は3代目の正容から松平姓となる。

晩年に至るまで神道を尊信しており吉川惟足に師事、霊号を土津（はにつ）とした。この土（はに）とは宇宙構成要素の根本であり、万物のはじめと終わりを示すそうだ。「津」は会津とされる。宇宙の万理を究めた会津藩主という意味らしい。土津神社は磐梯山の磐梯明神を祀る磐椅（いわはし）神社の西方に位置するが、保科正之が磐椅神社へ参拝した時、この地を気に入り自らの墓所と定め遺言を残した。墓所と定めたのは1672年8月のことであり、同年12月に逝去した。翌年に神体を奉じ仮殿に安置、1675年に神殿を竣工し神体を正殿に安鎮。土津神社を磐椅神社の末社とした。

※磐椅神社が祀る磐梯明神は、もともと「足長・手長」という夫婦の魔物であった。弘法大使が心を改めさせ、磐梯明神になったという民話がある。

境内

土津神社境内マップ境内マップ。春は高遠町から寄贈されたコヒガンザクラ、秋は紅葉の名所である。鶴ヶ城の鬼門（丑寅の方角）であり、保科正之の会津藩を守ろうとした意志が伝わる。

鳥居や石橋の手前（南側）に駐車場があるが、かつては社殿造営中に神体（保科正之の遺体）を一時的に安置した仮殿があった場所である。その後、土津神社を参拝する歴代藩主の休憩所となった。昭和後期まで福島県の研修施設として利用され、積慶寮と名が付けられていた。

新田開拓のために造られた土田堰土田堰（はにたぜき）の橋と大鳥居。土田堰に沿って東に進むと磐椅神社がある。土田堰は新田開拓のために造られた用水路であり、御神料を得るためでもある。

土津神社霊神之碑

保科正之の履歴、霊神之碑土津神社霊神之碑。保科正之の履歴を刻んだ石碑で、神社の石碑では日本最大。筆者は土佐高庸、字数は1943文字ある。全高7.6m、重さ30トン、面積は畳22枚ほど。

台になっている亀石はもともと猪苗代湖のある南向きであったが、湖まで這い出してしまうため北向きにしたという伝説がある。亀は中国伝来の神獣であり、竜の子とされる。死者の霊を護るという。これは松平家の繁栄を祈願したものと考えられる。

亀石は土町、碑石は河東村八田野（現在・会津若松市に編入）から採石したという。約12kmを2～3千人で7ヶ月かけて運んできたという。

拝殿

保科正之の拝殿男坂と呼ばれる石段を登ると拝殿。その奥に幣殿、本殿と続く。左に神饌所、右に神楽殿。

功績のあった家臣の末社。保科正之の子である正頼、正純、そして大老の田中正玄、家老の井深重光、友松氏輿、初代神官の服部安休など。田中正玄は高遠時代の保科正之から仕えており、城主不在の藩政を任されていた。友松氏輿は保科正之の葬儀、土津神社の建立、土田堰の開鑿に務めた。初代神官の服部安休は森蘭丸の孫で、儒学や神道を学んだ。