簡易水冷式CPUクーラーの解説

2003年ごろまでは、CPUの高クロック化により処理速度を上げていた時代でした。その頃のPentium 4やPentium Dでは、CPUの発熱がピークに達します。そこで、空冷式よりも冷却能力で優れている「水冷式CPUクーラー・キット」のブームが起こりました。しかし、「コストが高く、設置やメンテナンスの手間がかかる」というデメリットがあり、結局、水冷ブームは下火となっていきました。

水冷式CPUクーラーのAlienwareパソコンその後、簡易タイプの水冷式CPUクーラーが登場。1万円前後の低価格、設置のしやすさ、メンテナンス不要という理由から、ビギナーでもわりと導入しやすくなりました。簡易タイプは本格的な組立てタイプよりも冷却能力で劣りますが、導入のハードルは低くなっており、上級者だけのものではなくなってきました。メーカーPCでも多々採用されています。

なお、簡易水冷式の消費電力は“ 空冷式と比べてどうか？ ” というと、ポンプ動作の分、アイドル時（待機時）では若干大きくなる傾向にあります。しかし、高負荷時では高速回転せざるを得ない空冷式と違い、動作が安定しているため「消費電力が比較的小さくて済む」というのが通説です。いずれも若干レベルなので気にする必要はないでしょう。このページでは、一般的な簡易水冷式CPUクーラーの基本を解説します。

簡易水冷式CPUクーラーの構造

水冷式CPUクーラーの基幹となるパーツは、水冷ヘッド、ポンプ、ラジエータ（放熱器）の3つ。そして簡易水冷キットでは、「水冷ヘッドとポンプが一体化」しています。

ポンプでクーラント（冷却液）を循環させます。CPUの熱で高温化したクーラントをラジエータへ送り、ラジエータで冷却されたクーラントをCPU側へ戻します。ラジエータでの冷却は空冷ファンを使うため、水冷といってもファンレスではないです。各パーツの役割は以下の通り。

水冷ヘッド + ポンプ（簡易水冷キットでは一体化）

水冷ヘッドは薄い金属製パーツであり、CPUに密着しています。内部では表面積を大きくした水路が設けられており、効率よく熱を冷却液に伝える仕組みになっています。水冷ヘッドとラジエータの間で冷却液を循環させるのが「ポンプ」であり、簡易水冷キットでは水冷ヘッドと一体化しています。

水冷ヘッドとポンプが一体化空冷式CPUクーラーのヒートシンクと比べると、ひと回りコンパクトなサイズで済みます。

クーラント（冷却液）

冷却液は純水に防腐剤を混ぜたもので、「クーラント」といいます。簡易水冷式CPUクーラーでは密閉度が高いので蒸発はほとんどなく、ユーザーが冷却液を補充することはありません。ちなみに、かつての組み立て式は別途タンクが搭載され、蒸発が起きるので冷却液をタンクに補充する必要がありました。

ラジエータ（放熱器） + 空冷ファン

水冷ヘッドで吸収された熱は冷却液に伝わり、ポンプによって「ラジエータ」に送られます。ラジエータは放熱器であり、流水パイプに放熱フィンが取り付けられた構造となっています。セットになっている空冷ファンがラジエータに送風（または吸い出し）して熱を持った冷却液を冷水に戻します。冷やされた冷却液は再び水冷ヘッドへ循環されます。この冷却ファンは背面のPCケースファンと兼用になっているのがほとんどで、12cm角ファンの採用が一般的です。

手前にラジエーター、奥に空冷ファンがあるタイプは、吸い出しによるラジエーターの空冷。そして空冷ファンはPCケースの排気ファンを兼ねている。