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塩谷氏のもうひとつの拠点、御前原城

矢板市早川町174にある御前原城（ごぜんはらじょう）へ登城した。（2016年1月2日）。鎌倉幕府が成立したころ、堀江朝義（源姓塩谷氏）の養子となった塩谷朝業（しおのやともなり / 1174年～1248年）が御前原城を本拠の1つにしたと伝わる。川崎城が詰の城で、御前原城が居館とも考えられるが、発掘調査によると考古学的には1400年ごろの城だと考えられ、200年ほどの年代差があり、詳しくは分かっていない。

御前原城跡地はシャープの工場用地内にあり、国道4号矢板バイパス開通後の周辺開発により、主郭部と虎口以外は消失した。所在地の早川町とは、シャープの旧社名：早川電機工業に由来する。主郭部と虎口は昭和41年に県指定文化財となり、33.985㎡が保存されている。国道4号矢板バイパスは当初、中心部を通る予定だったが、保存運動が起こり路線が変更された経緯がある。

御前原城の縄張り図当時の規模は東西650m、南北1kmと推察されている。

御前原城の、主郭部と虎口

主郭部と虎口現存する城郭規模は、主郭部で東西180.5m、南北172.5m。主郭部土塁内側の平坦部は東西133m、南北123mほどある。
虎口部で東西39m、南北53mほど。

主殿域と呼ぶところでは、礎石建物跡や庭園跡などが確認されている。庭園跡では築山、浮島、池で構成され、浮島には2度に渡り橋が架け替えられた形跡がある。築山周辺には瓦塔や立石が立てられたという。

主郭部北西部では武具の工房らしき施設が確認され、南部から南東部では馬場に活用されたと推察されている。城の出入り口は西と北と南の土塁中央にある。西は木幡神社や川崎城に通じる西方面出入口、北は現在の出入り口になっているが、廃城して200年後あたりに工事されたものとする。南には虎口があることがら重要な出入り口であったと推察されている。

庭園跡

御前原城の庭園跡庭園跡の様子。庭園跡があることから、御前原城は塩谷氏の平時の居館と考えられるが、発展しづらい場所にあり、次第に別邸や川崎城の支城として機能していたと考えられる。

北堀と北土塁～出入り口は廃城後のもの

御前原城の北出入口廃城後に出来たとされる北の出入り口と、北堀と北土塁。

東土塁

東側はスポーツ広場になっており、奥に東土塁が見える。

南土塁と西土塁

主郭部北西部にはゲートボール場かあり、武具の工房らしき施設があったという。ここから南土塁と西土塁が見える。

虎口のある南出入り口と、南堀

メインゲートだった南出入り口と南堀の様子。

西堀と西土塁

西堀と西土塁。西土塁中央にある出入り口は、木幡神社や川崎城に通じる西方面出入口だった。

御前原城の廃城

1590年の小田原の役をきっかけに、塩谷氏の家臣であった岡本氏が独立し、御前原城を居城とした。1644年には泉騒動で岡本保真が殺害され跡継ぎがなかったため、岡本氏は改易、御前原城は廃城となった。1867年には百姓一揆が勃発し、御前原城跡に集結したこともあった。

塩谷氏の氏神を祀る、木幡神社

塩谷氏とゆかりのある木幡神社。川崎城と御前原城の中間に位置する。平安初期、坂上田村麻呂が蝦夷征伐の際、戦勝祈願したともいわれ、江戸時代、徳川将軍家からも御栄印を賜っている。

砦のような構えがあり、裏手にはさらに古墳のような高台がある。出丸として活用されたと推察してもおかしくはなさそうだ。

木幡神社の鉄燈籠木幡神社には鉄燈籠が保管されている。家康供養のために松平土佐守藤原忠義（山内忠義：伯父の山内一豊の養嗣子）が日光東照宮に寄進したもので、何らかの理由で木幡神社に移されたようだ。地震などで破損した亀裂損壊部がみられ、日光東照宮とつながりのある木幡神社に移されたと推察されている。現在は修復され、特殊樹脂によって保存処理がされている。見た目ではヌメッとした表面になっている。