2009年前半、ハードディスクのトレンド
ハードディスクの中には「プラッタ」というデータを記録する円盤が入っていて、それを磁気ヘッドでデータを読み書きする仕組みになっています。
このような構造を採用しているため、今後も劇的な高速化は望めません。
しかし、「プラッタ」の記録密度の技術は進んでいるので、ますます大容量化することが推測できます。そして、記録密度が上がれば、データを読み書きする磁気ヘッドの移動(アクセスタイム)が少なくてすむので、わずかながらの高速化は期待できそうです。
ハードディスクとSSDの関係は?
ハードディスクに代わるストレージとして、半導体メモリを用いた記録媒体、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)があります。
メリットは
●軽量・薄型・小型化が容易。
●極めて低消費電力・低発熱のため、高温な環境下の使用であっても安定動作。
●ソフトウェアの立ち上がりやファイル検索が速い。
●HDDに比べて、散在したデータの読み込み(ランダムアクセス)性能に優れる。
●アクセス中の物理的衝撃に強い。HDDのようなヘッド・クラッシュがない。
デメリットは
●HDDに比べて1GBの単価が高価格。
●2008年時点で、最大容量がHDDよりかなり低いので、高画質の動画をストックするような使い方には向かない。
●SSD内にて、同じエリアでの繰り返し書き込みをしたとき、耐性がHDDより低い。
年々、SSDの大容量化と低価格が進んでいますが、ハードディスクに取って代わることはなさそうです。上記のように得意不得意があることとに加え、ハードディスクの技術研究では100TBの大容量化を視野に入れているからです。
このまま「高速で小容量ののSSD、やや低速で大容量のハードディスク」と住み分けされそうです。SSDがハードディスクの容量に追いつくことはないでしょう。
ハードディスクの容量
デスクトップの容量:
2009年1月時点では、320GB〜500GBが目立ちます。自作パーツでは1TB〜1.5TBがお手軽価格になっているので、年内には1TB〜1.5TBが主流になると推測しています。
ノートパソコンの容量:
2009年1月時点では、250GB〜320GBが目立ちます。自作パーツでは500GBがお手軽価格になっているので、年内には500GBが主流になると推測しています。
地デジパソコンなど動画をメインに扱う人は500GBでも、あっという間です。ちなみに地デジ番組録画では500GBで65時間分といわれます。OSやソフトウエアも入っているので、実際はもう少し少なくなります。そういう人は、外付けハードディスクや2台目の内蔵ハードディスクで追加するといいでしょう。
そういうわけで、パソコンを買うタイミングとして、ハードディスクの大容量化を待つのはナンセンスだと思います。
ハードディスクの規格
SATA2規格が主流です。「デルではSATAとあるから、古い規格なのかな?」と思われた人もいるでしょうが、デルのサイトで仕様詳細をみるとSATA 3.0Gb/s NCQ HDDとあります。このスペックから分かるようにSATA2を採用しているのが分かります。
SATAには新仕様のSATA2がありますが、これには呼び名が混乱していて、あえて区別しないメーカーもあれば単に機能別にいい分けている場合もあります。
SATA2は、簡単にいうと最初に登場したSATAから転送速度を上げたり、NCQの機能を追加したりといった程度です。新規格というよりバージョンアップです。当然、SATAとSATA2は互換性があり、転送速度の違いだけです。
SATA2は、3Gb/sの転送速度
最初のSATAでは1.5Gb/sだった転送速度を、2倍の3Gb/sへ高速化。
では3Gb/sという単位になじみがない人のために解説します。
3Gb/sは、「3000M bits / second」で、1秒間に3000M bitの転送速度ということです。ハードディスクの場合は「10bit=1バイト」なので、1秒で300MBの転送速度となります。
NCQ(ネイティブ・コマンド・キューイング)
単純にいうと高速アクセスが可能なシステムのことです。
データを記録したり消去するいうことは、その都度、ハードディスク内では虫食い状態になったスペースに記録と消去を繰り返すことになります。分散されているデータを読み込むには、通常順番があります。
図で解説しましょう。あるファイルは1〜4のデータで構成されているとします。
通常、データは決められた順番の通りに読まれます。つまり非NCQの場合です。
データは分散しているため、都合のいい場所にあるとは限りません。
ディスク自体は時計回りに動くので、読みとりヘッドから近いのは3→2→4→1の順です。しかしデータの順番通りに読まなくてはならないので、1→2→3→4の順で読みます。結果、ディスクを約2回転半させています。
次はNCQ対応のハードディスクです。
効率よく3→2→4→1の順に読みます。つまり、決められた順番は一旦無視して、読み込んでから組み直すやり方です。よってディスクは1回転で済みました。
非NCQでは、多く回転させてアクセスしなくてはならず、時間がかかるうえハードディスクにも負担がかかります。回転数が多いということは発熱が多く、理論上、寿命も短いことになります。
しかし、NCQ対応だとデータを効率よく読みとるので最低限の回転で済み、読み出しが速く快適になります。それに理論上、ハードディスクを長持ちさせられます。
SATAの外観
Serial ATA(SATA):細いケーブルで接続。現在の主流規格。
Serial ATAを略してSATAと呼ばれます。そして、ATAとはハードディスク用の規格であることを指します。
転送はシリアル(連続)方式です。単線なので効率悪そうにも感じるのですが、現在のCPUが高クロックなので、安定して高速で転送できます。また、ケーブルが細いため、パソコン内部の送風冷却の妨げになりません。
IDE(パラレル ATA):幅広のケーブルで接続。いまや旧規格です。
パラレル方式のため、現在の高クロックのパソコンには不向き。これを採用しているパソコンメーカーはすでに皆無。
左:デスクトップに採用される3.5インチHDD
右:ノートパソコンに採用される2.5インチ HDD
ちなみに、このインチサイズはディスク盤「プラッタ」の直径サイズ。1インチは2.54センチなので3.5インチは約8.9センチです。
ハードディスクの回転数
ハードディスク内にある円盤(プラッタ)にデータが記録されており、それが高速回転し、磁気ヘッドがデータを読み書きをします。このプラッタの回転が速いほど、アクセスが速く、快適なパソコンということになります。
回転速度はrpmという単位で呼ばれ1分間で何回転するかを表します。
デスクトップパソコンの場合、コストパフォーマンスと性能を考慮すると7200rpmが標準です。10000rpmというのもありますが、一般的ではありません。
ノートパソコンの場合は、5400rpmが標準といったところです。7200rpmになると購入コストが高めになります。
回転数を上げることで、理論上データ速度を上げることができますが、発熱の問題があり、技術的にこの数値が変わることはないと思います。
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