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北条早雲に滅ぼされた、相模三浦氏の終焉地
新井城と三浦道寸の墓所
2017年4月に、神奈川県三浦市にあった新井城を登城した。北条早雲の最大ライバルで知られる三浦道寸が討たれ、相模三浦氏の終焉地である。相模湾に突出した油壺一帯が新井城の城郭とされ、128ヘクタールの自然を利用した要害であった。
新井城は小網代湾と油壷湾に挟まれて、三方が海に面した断崖地である。北方3キロ先に大手があるが、そこの引橋を切り落せば陸路からの攻撃は不可能となるため、かなりの堅固を誇る城であった。北条早雲（当時は伊勢新九郎）が新井城攻略に3年を要したのも納得できる。関東大震災による隆起で、現在は往時の面影は薄らいでいるとのこと。居館があったとされる本丸を中心に空堀や土塁の遺構は残されている。
新井城の支城として三浦市役所あたりに三崎城があるが、相模三浦氏の時代には新井城も三崎城も単一だったと近年では考えられている。三浦氏を滅ぼし後北条氏の支配になった時、改築されて新井城と三崎城に分断されたと考えられる。後北条氏は、里見氏に対する備えの城として利用した。新井城は何度か里見氏に攻め落とされることもあったが、北条氏康（北条早雲の孫）が奪還している。そして北条氏康の五男・北条氏規が城主を務めている。（韮山城主と兼任）
荒井海水浴場から新井城を臨む。
新井城の戦い
1510年、小田原城の北条早雲と岡崎城の三浦道寸こと三浦義同（よしあつ）が対立。1512年、三浦道寸は岡崎城を落とされ、新井城へ退却し父子で籠城。扇谷上杉家へ援軍を要請するも、援軍の太田資康（太田道灌の子で道寸の娘婿）が北条氏に討たれるしまつ。
新井城合戦では三浦一族が新井城に篭り、相模平定を目論む北条早雲の大軍を相手に3年間にわたり奮戦した。ついに落城し、三浦道寸は1516年の7月11日に自刃する。その子・荒次郎 義意（よしおき）は父の切腹を見届けた後、突撃をかけ討ち死にしたと伝わる。他の将兵は討たれたり油壷湾へ投身して三浦氏は全滅した。戦場となった湾は一面が血汐で染まり、まるで油を流したような状態になったことから「油壺」と言われるようになった。
三浦道寸辞世の句は、「討つ者も 討たるる者も 土器（かわらけ）よ くだけて後は もとの土くれ」
北条五代記では三浦氏滅亡の様子を次のように記している。「今も7月11日には、毎年新井の城に雲霧覆いて日の光定かならず、丑寅の方と未申の方よりイナズマ輝き出て、両方光入り乱れ風猛火を吹き上げ、光のなかに異形異類の物有りて干戈をみたし、虚空に兵馬駆け散り乱れ、天地を響かし戦う有様、恐ろしくと言うばかりなり云々」
因みに、1590年の豊臣秀吉による小田原合戦で小田原北条氏は滅ぶが、4代当主の北条氏政が切腹したのも7月11日（弟・北条氏照も同様）。因果応報というところか。新井城主を務めたのは北条氏規だが、その長男が河内狭山藩の初代藩主となり、河内国にて北条氏は存続した。
油壺ハイキングコースで、新井城の散策
新井城は油壺湾の北側に伸びる岬、網代崎にある。新井城の散策では、市営駐車場の油壺バス停からスタートする外周2Kmのハイキングコースを歩くことになるが、案内板が整備されておらず現地でやや迷った。京急油壺観潮荘の50mほど手前にある坂道を降りて横堀海水浴場から反時計回りに歩く。
横堀海水浴場。この横堀というのは新井城の堀を指すのだろう。
横堀海水浴場から胴網海水浴場までの岩場の道。この「胴網」とは、新井城合戦で討たれた将兵の首なし胴体が漁師の網に掛かったことに由来するとか。
三浦道寸の墓所
胴網海水浴場から一旦、台地に上がる坂道を登り、三浦道寸の墓所へ行く。横堀海岸と胴網海岸の間の舌状台地にあり、物見に適していそうな地形である。なお、本当か知らないが三浦道寸のお気に入りだった場所という話もある。横堀海岸側には堀切らしき遺構が感じられ、墓地の「横の堀」という意味だったりして・・。
三浦氏の家紋（丸に三つ引き）。鎌倉時代の三浦氏は宝治合戦（1247年）で執権北条氏と安達景盛らに滅亡させられた。しかし、三浦氏佐原流の出身である三浦盛時は北条時頼に与しており、一度は滅んだ三浦氏の再興をした。この佐原流三浦氏が戦国期になると相模三浦氏となっていた。
再び胴網海水浴場へ戻り、荒井海水浴場へ向かって反時計回りへ進む。
荒井海水浴場へ向かう
途中、海岸の岩場からは周回できない場所があるので、階段を登り悪路を避ける。
越えられない岩場とはこれ。階段の上から見た様子。
本当にハイキングコースなのかと心配しつつ、そこそこ長いコースを歩き、ようやく荒井海水浴場が見えてきた。新井城の「新井」とは、荒井から転じたものだろうか。それに三浦道寸の子が荒次郎で、新井城主であったことも関係ありそう。相模湾を見渡せる荒井浜では、毎年5月の最終日曜日に、三浦一族を偲ぶ「道寸祭り」が開催されている。
荒井海水浴場から上がり、油壷湾沿いのコースを北上する。東大臨海実験所の私有地になっており立ち入り禁止になっているが、ハイキングコース側から土塁や堀跡が確認できる。この辺が主郭のようだ。
堀切跡を通り道にしたようだが、立入禁止なので探索できず。
神奈川の景勝50選にもなっている油壷湾。三浦半島の南西部に位置し、相模湾に面する。幅100m × 150m × 700mの規模で東西に細長い。リアス式海岸の入り江であり、浸食谷の沈降によって生じた湾である。地形的理由で波の穏やかな湾であり、台風の被害が少ないことからヨットハーバーに利用されている。戦時中では特攻戦隊の基地が置かれ、回天隊（人間魚雷）があった。
三浦氏は全滅し、戦場となった湾は一面が血汐で染まり、まるで油を流したような状態になったことから「油壺」と言われるようになった。（死体から出た油という話もある）。古戦場ゆえ、漁師の間では三浦氏の亡霊話もあるが、一方、穏やかな水面がまるで「油を流したかのよう」ということで油壷と呼ばれたという説もある。
北方3キロ先の要害～小網代の森
新井城を陸路から侵入するなら北方であるが、独特な地形から大軍が進撃するのが困難である。その要害の名残とも言える小網代（こあじろ）の森へ行く。
小網代の森は、三浦半島の先端にある相模湾に面した約70haの森。森と湿地と干潟と湾とを川が結ぶ、ひとつの流域がまるごと自然のまま残された場所で、陸路を阻み新井城の北の守りとなった天然の要害だったことが伺える。大手であり引橋のあった場所は今でも地名として残されている。
森の中央にある谷に沿って流れる「浦の川」の集水域として、森林、湿地、干潟及び海までが連続して残されている。まさに動植物の楽園という感じで、4～5月頃が一番快適だと思われる。
森の中心にある散策路を通って、森林から干潟へと続く自然の移り変わりを楽しめる。これは関東地方で唯一の自然環境と言われている。
小網代湾が見えてくると、森から干潟に変わる。
小網代湾と隣接する白鬚神社。小網代湾は三崎の避難港として知られ、白鬚神社は航海安全大漁満足の神として崇拝されてきた。三浦氏が滅んで数十年後の天文年間（1532～55）に、網にかかった束帯姿の御神体を祀ったと伝わる。叩くとカンカン音がする石の錨がある。
三浦道寸が再建した永昌寺。永昌とは三浦道寸の法号からとられたもの。レポートは以上。
近隣のスポット（三戸海岸コース）
三戸海岸方面にもぶらり寄ったので、ちょっと紹介。三崎口駅から西側のAコース（海辺の静かな里みちを巡る）と呼ばれるハイキングコースである。この浜辺は三戸海岸であり、奥に見える突出した丘が「黒崎の鼻」と呼ばれるところで、夕日と富士山のビュースポットで知られる。
天神丸（サンコロ石）
三戸海岸に放置されている加工された石は、天神丸とかサンコロ石と呼ばれている。江戸城築城のために運ばれてきた石と言われる。
三戸友澄 墓所（つつじ公園）
三浦観光パンフに載っているものの、場所がわかりにくい三戸友澄（みとともずみ）墓所。つつじ公園と呼ばれる場所にあるが、公園というより鬱蒼とした塚山である。承久の乱（1221年）では朝廷側に従い奮戦したが、鎌倉幕府に討たれた武将だという。故郷に葬ったとのこと。つつじの見ごたえは微妙な感じ。墓石や五輪塔は崩れたままだった。
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歴史年表と城郭基礎知識
同じ史跡でも時代によっていくつかの出来事があり、 時代推移の把握が必須となります。 そのため年表をまとめています。また、城郭散策のレポートではちょっと専門用語が出るので、城郭用語もまとめてあります。パソ兄さんのDELLパソコン調査
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