Haswellマイクロアーキテクチャ(LGA 1150版)
2013年6月に登場したHaswellマイクロアーキテクチャは、CPUソケットがLGA 1150。前世代のIvy BridgeはLGA 1155なので互換性はありません。プロセスルールは22nmを引き継いでいます。
2014年にはHaswellのマイナーチェンジ版である、Haswell Refreshが登場。(Core i7-4790Kなど)
Haswellの特徴は、新命令拡張のAVX2のサポート、アーキテクチャの拡張で内部構造の改良、そしてCPUに電圧レギュレーターの一部を内蔵し、効率的な電源管理が可能となりました。CPUブランドは第4世代インテルCore i7 / i5 / i3となり、それぞれ4000番台のプロセッサナンバーになっています。
開発コード名: | ファミリー | コア数 | プロセス |
Haswell 2013年6月~ |
Core i7 4700番台 | 4コア/8スレッド | 22nm |
Core i5 4400~4600番台 ※4570Tは除く |
4コア/4スレッド |
||
Core i3 4100~4300番台 | 2コア/4スレッド |
【2013年~2015年ごろまで主流】
Haswellマイクロアーキテクチャ(LGA 1150版)の設計
チップセットH87における構成で解説。
ベースはIvy Bridgeを引き継いでいますが、ソケットが異なるため互換性はありません。図にて赤字で記載しているところは、前世代Ivy Bridgeから新たに追加された要素です。注目ポイントとなる構造上の大きな変化は次の3つ。
- モニタでデジタル接続のときはチップセットを介せず、CPUが直接管理できる。
モニタアナログ接続のみチップセットを介する。 - USB3.0が最大6ポートまで対応可能(従来は2ポート)
- SATA3.0が最大6ポートまで対応可能
Haswell(LGA 1150版)の新たな要素
- CPUソケットは新たにLGA 1150となり、LGA 1155のSandyBridge・Ivy Bridgeとの互換性なし
- SATA 3.0 規格(6Gbps)が最大6ポートまで増加 ※SATA 2.0 規格(3Gbps)は廃止
- USB3.0端子が最大6ポートまで増加
- デジタルディスプレイ出力がCPU側に統合。※アナログは従来通りFDI経由でチップセットからの出力
- 上位モデルにフレキシブルI/O採用。
- 新拡張命令セットのAVX2を追加~演算能力の向上化
- 内部構造の改良で、浮動小数点演算ユニットがFMAに対応
- 【HDグラフィクス4600】 最大画面解像度が4096 × 2304(4K2K)に対応!
- 【省電力化】 CPUに電圧レギュレーターの一部を内蔵(iVR)~外部からの電流入力の一本化
- 【省電力化】 電力管理機能のCステートが、C7まで拡張~アイドル時では消費電力が5%ダウン
※上記はチップセットZ87 / H87 / Q87 の場合
内蔵グラフィックの性能別(モバイル版も含む)
HaswellのGPUコアは前世代から踏襲しているものの、エンジン系統の性能や機能を強化している。GT1~GT3eのように4つのレベルに細分化されているが、デスクトップ向け(LGA 1150版)ではGT2に属する「 HDグラフィックス4600 」となる。 上位であるGT3やGT3eは40基の実行ユニットを内蔵するなど高パフォーマンスで、特に GT3eはeDRAMというGPU専用メモリを搭載しさらに高い性能である。性能レベル | 名称 |
GT1 | HDグラフィックス |
GT2 | HDグラフィックス4200、4400、4600、P4600、P4700 |
GT3 | HDグラフィックス5000、 Irisグラフィックス5100 |
GT3e | Iris Pro グラフィックス 5200 |
前世代(Ivy Bridge)から引き継いでいる要素
- CPUに、メモリコントローラとPCI Expressコントローラを内蔵
- PCI Express 3.0に対応(8GT/秒)
- メモリはDDR3 / DDR3L-1600対応で、2枚同時挿しのデュアルチャンネルに対応。
- 前世代同様、チップセットはDMI2.0で接続。
- チップセットにUSB3.0コントローラを内蔵。USB3.0端子が標準搭載となる
- 高速インターフェースのThunderboltに対応
- キャッシュメモリの新構築~LLC(Last Level Cashe)を採用
- HTテクノロジー(ハイパー・スレッディング・テクノロジー)の採用 ※非搭載のファミリーもある
- ターボ・ブースト・テクノロジー2.0 ※Core i3のように非搭載のファミリーもある
- ラピッド・スタート・テクノロジー(RST)対応で、休止状態からの復帰を高速化
- インテル スマート・レスポンス・テクノロジー(ISRT)に対応
- 3次元構造の「Tri-Gate(トライゲート)トランジスタ」を採用
- 動画再生支援にQuick Sync Video 2.0を搭載
Haswell 新要素解説
Haswell(LGA 1150版)の新たな要素として、 フレキシブルI/O採用、新拡張命令セットのAVX2、インテル HDグラフィックス4600を解説します。
フレキシブルI/O採用
上位モデルではフレキシブルI/O採用。 従来では「SATA3.0、USB3.0、PCI Express 2.0」のポート数が固定されてきたが、フレキシブルI/Oの採用でマザーボード・メーカーが組み合わせを変更できるようになった。「SATA3.0、USB3.0、PCI Express 2.0」のどれに比重を置くか、特化型のマザーボードが可能となる。
新拡張命令セットのAVX2~演算能力の向上化
AVX2では、FMA(融合積和算)命令が追加。整数演算が256bitのベクトル幅で行える。(高速ベクトル演算命令)。マルチメディアのアプリや、ゲームでも使われる計算なので対応すれば効果が大きい。
AVX2非対応で比較しても、5%ほどの高速化が期待できるとのこと。※前世代Ivy Bridgeの同ポジションCPUと比較した場合。
命令拡張 | 追加された世代 |
MMX | MMX Pentiumシリーズ |
SSE1~4 | Pentiumシリーズ、Core 2 Duoなど |
AVX | 第2世代Core iシリーズ(SandyBridge) |
AVX2 | 第4世代Core iシリーズ(Haswell) |
電力管理機能のCステートが、C7まで拡張
Cステートとは、電力管理のために待機状態レベルを定義付けしたもの。数が大きいほど休ませる回路が多く、低消費電力となる。前世代のIvy BridgeではC6までであったが、HaswellではC7まである。
※電源ユニットでは、12V2出力に0.05Aまで下がる機能が必要となった。従来の電源ユニットでは動作不安定の可能性が示唆されている。市販の電源を使うならHaswell対応を謳っているものが安心。
CPUに電圧レギュレーターの一部を内蔵(iVR)
外部(マザーボード上にあるVRM)からの電流入力を一本化。CPUに電圧レギュレーターの一部を内蔵した。これがiVR(Integrated Voltage Regulator)である。CPU内部の各エリアへの給電はiVRで行い、結果的に省電力化となる。急激な電圧変更の要求にも応えられるため、オーバークロック時に役立つ。
第4世代Core i7に内蔵するグラフィック(HDグラフィックス4600)
CPUに内蔵しているグラフィック機能が「インテルHDグラフィックス」です。AMDやNVIDIAの単体GPUが搭載されていないパソコン製品ではこの「CPUに内蔵のグラフィック」が機能します。内蔵グラフィックといっても2011年登場のSandyBridge世代から「CPUコアとの完全統合化」がされているので、従来よりも強力なものとなっています。
第4世代Core i7に内蔵するインテルHDグラフィックス4600では、演算ユニットが前世代(4000)と比べると、16基から20基へと増加しています。Direct X 11.1のサポートもされています。(前世代はDirect X 11まで)。最大画面解像度が4096 × 2304(4K2K)に対応!(前世代のHDグラフィクス4000では2560 × 1600まで)
動画再生支援(ハードウェア・エンコーダ)のQuick Sync Video2.0を引き継いでいます。
※Intel Quick Sync Video とは
Quick Sync Videoは動画再生支援機能。動画編集ではデコードとエンコードの処理が機能強化されています。※「MPEG-2、H.264、MPEG-4 AVC、VC1」のデコードをハードウェア処理。 「MPEG-2、H.264、MPEG-4 AVCのエンコード」をハードウェア処理。 さらに処理エンジンである「マルチフォーマットコーデック」を大幅強化。ただ、Quick Sync Videoが利用できるのはHDグラフィックが有効時の時のみで、グラフィックカード(単体GPU)を使用しているときは、Intel Quick Sync Videoが機能しません。
Haswellマイクロアーキテクチャの、CPU製品ラインナップ
第4世代インテル Core i7-4000番台、Core i5-4000番台、Core i3-4000番台のごく一部をピックアップしてみました。大まかな把握としてご覧ください。
TDP (熱設計電力)
メインストリームの上位CPUではTDP 84~88Wで、その省電力版であるSシリーズが65W。Tシリーズは超省電力版であり、35~45W。SシリーズおよびTシリーズは主に一体型パソコンで使われている。下位のPentium 、Celeron では通常版でも53W。
末尾のアルファベット(サフィックス) | 例 | TDP |
無し:通常版 K:倍率ロックフリー(オーバークロック可能) S:省電力版 T:超省電力版 |
Core i7-4790K Core i5-4690K |
88W |
Core i7-4790 Core i5-4690、4440 |
84W | |
Core i7-4790s Core i5-4690s、4440s |
65W | |
Core i3-4360、4160 | 54W | |
Pentium G3450 Celeron G1840 |
53W | |
Core i7-4790T Core i5-4690T、4670T |
45W | |
Core i5-4590T、4460T Core i3-4350T、4150T Pentium G3440T Celeron G1820T |
35W |
第4世代インテル Core i7-4000番台
4世代のCore i7は、ほとんどが4コア実装のクアッドコア。HTテクノロジーで8スレッド動作。 3次キャッシュ(LLC)は8MB。ターボ・ブースト2.0(略:TB)搭載。 末尾のKはオーバークロック向け倍率ロックフリー。末尾のSは低消費電力版、末尾のTは超低電力版。 内蔵グラフィックはHDグラフィックス 4600。
ファミリー | コア数と スレッド数 |
クロック (TB最大時) |
3次 キャッシュ |
内蔵GPU(最大時) | プロセス |
Core i7 4770K | 4コア/ 8スレッド |
3.5GHz (3.9GHz) |
8MB | HDグラフィックス 4600 (1,250MHz) |
22nm |
Core i7 4770 | 4コア/ 8スレッド |
3.4GHz (3.9GHz) |
8MB | HDグラフィックス 4600 (1,200MHz) |
|
Core i7 4770s | 4コア /8スレッド |
3.1GHz (3.9GHz) |
8MB | HDグラフィックス 4600 (1,200MHz) |
|
Core i7 4770T | 4コア/ 8スレッド |
2.5GHz (3.7GHz) |
8MB | HDグラフィックス 4600 (1,200MHz) |
【例外ラインナップ】オールインワン向け~ソケットはBGA
Iris Pro グラフィックス 5200は HDグラフィックス 4000(Ivy Bridge)の2倍以上の性能とされる。
Core i7 4770R | 4コア/ 8スレッド |
3.2GHz (3.9GHz) |
6MB | Iris Pro グラフィックス 5200 (1,250MHz) |
22nm |
第4世代インテル Core i5-4000番台
4世代のCore i5は、ほとんどが4コア実装のクアッドコア。HTテクノロジー非搭載。3次キャッシュ(LLC)はほとんどが6MB。ターボ・ブースト2.0(略:TB)搭載。内蔵グラフィックはHDグラフィックス 4600。
末尾のK(オーバークロック向け倍率ロックフリー)、S(低消費電力版)、T(超低電力版)もある。
ファミリー | コア数とスレッド数 | クロック (TB最大時) |
3次 キャッシュ |
内蔵GPU (最大時) |
プロセス |
Core i5 4670 | 4コア/ 4スレッド |
3.4GHz (3.8GHz) |
6MB | HDグラフィックス 4600 (1,200MHz) |
22nm |
Core i5 4570 | 4コア/ 4スレッド |
3.2GHz (3.6GHz) |
6MB | HDグラフィックス 4600 (1,150MHz) |
|
Core i5 4430 | 4コア/ 4スレッド |
3.0GHz (3.2GHz) |
6MB | HDグラフィックス 4600 (1,100MHz) |
第4世代インテル Core i3-4000番台
4世代のCore i3は、2コア実装のデュアルコア。HTテクノロジーで4スレッド動作。3次キャッシュ(LLC)は4MBまたは3MB。ターボ・ブースト2.0(略:TB)は無し。末尾Tの超低電力版もある。
ファミリー | コア数とスレッド数 | クロック (TB最大時) |
3次 キャッシュ |
内蔵GPU (最大時) |
プロセス |
Core i3 4340 | 2コア/ 4スレッド |
3.6GHz (-GHz) |
4MB | HDグラフィックス 4600 (1,150MHz) |
22nm |
Core i3 4130 | 2コア/ 4スレッド |
3.4GHz (-GHz) |
3MB | HDグラフィックス 4600 (1,150MHz) |
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